その後が大切! 出産と引っ越しが重なった時の注意点と対策
概要
若かりしころ、新しい場所に引っ越すときというのは、当然少しの不安も抱えつつ、それ以上にどこかわくわくするような、その状況を楽しむ余裕さえあったような気がしませんか。
ところが、人は年を重ねるごとに、新しいことへの挑戦が億劫に感じたり、恐怖心や不安などマイナスな感情が大きくなるものです。例外なく、引っ越しに関しても同じような感情面での変化があるのではないでしょうか。
特に、大人になって新しい場所に引っ越すとなれば、そこには様々な事情が絡んできます。しかも自分自身だけでなく、家族も共に引っ越すようなことになれば、より一層慎重になるのも当然ですよね。大人になってからの引っ越しが必要になる理由の代表が「転勤」・「結婚」・「出産」ではないでしょうか。この3つは、どれも自分以外の人間が関係するものです。だからこそ、引っ越す際には、良い思いだけで終われない場合も往々にしてあり得るという訳です。
そこで、この中から特に「出産」にまつわる引っ越しの失敗事例についてご紹介しましょう。
失敗事例
Aさんは4年程前に現在の家に引っ越してきました。理由は「出産」でした。よくある話ですが、Aさんは以前から子育てをするなら実家近くがいいと考えていました。いずれ社会復帰したときにどうしても実家の力を借りなければ厳しいだろう、という判断からです。その考えには夫も賛成で、子供ができたら実家近くに引っ越そうと話していました。しかしながら、夫婦共働きで、Aさんは妊娠してからもしばらくは仕事をせざるを得ない状況下にあり、出産を1ヵ月後に控えた時期にようやく実家に引き上げることになりました。それから約2ヶ月(出産を終えて1ヶ月検診が終了するまで)は実家で過ごすことになるため、Aさんは夫と過ごした家から自身の荷物を先に実家に引き上げたのです。
しかし、ここで問題なのは、Aさんの夫はまだ今の家に残ると主張したことです。理由は、職場がかなり遠くなることに加え、Aさんが実家にいる間自身が新しい家で一人暮らしを強いられるのには抵抗があったこと。それで、二人の意見を合わせ、夫の方はAさんが新居に入居するまでに荷物を少しずつ運ぶ、ということになりました。当然ながら、通常なら一度で済む引っ越しを少し変わった形で行うことになりかなりの手間だとはわかっていたのですが、他に方法も思いつかず、このような方法をとったのです。しかし、出産後のことが全く見えていなかったAさんご夫妻はこの後大変な思いをすることになります。
無事出産を終えたAさんは慣れない育児に四苦八苦していました。毎日寝不足が続き、体力も限界、しかもAさんの場合、産後の肥立ちがあまりよくなく、精神的にもかなり追い詰められることに。体調も優れない中、刻一刻と引っ越しの日程が迫ってくるのが次第にものすごく不安になってきました。実際、実家では母親の好意に甘え、家事はまったくせず、赤ちゃんにつきっきりの生活。これで引っ越しの準備なんてできるはずもなく、ほとんどぐちゃぐちゃに詰め込んだ荷物を新居に到着してから片付けることになりました。
この時、Aさんは赤ちゃんの世話と家事の両立も満足にできない、おまけに部屋はいつまでたっても片付かないので、それが心に重く圧し掛かってきました。そしてそんな状況の中で体調を崩し、乳腺炎を繰り返しました。なにもないのに涙が出てきたり、イライラして夫に当たったり、それで余計に事は前に進まない、という負のスパイラルにはまっていきました。
引っ越しは思っている以上に体力を使います。産後のまだ体力が戻りきっていない体で片付けることは、想像以上に体に堪えました。しかも、産まれて間もない赤ちゃんもいるので、自分のペースで事を上手く運ぶなんて不可能です。とんでもないストレス状態でした。
ようやく家の中とAさんの気持ちが落ち着くまでに、約半年が経過していました。
正しい対応
ここでAさん夫妻は、自分達の選択ミスについて話し合いました。
1点目は、引っ越しの時期についてです。Aさんが実家に引き上げるタイミングで一緒に済ませてしまうか、もしくは一度今までの家に落ち着いてから頃合を見て引っ越すか、そのどちらかが良かったのではないかということ。そうすればこんなにも一気に色んなことに追い立てまくられなくても良かったのに、と。
2点目は、先を見越せていなかった、ということです。引っ越しをした後の生活がどのように変わるか、シミュレーションできていれば対策の仕方も変わってきたはず。例えば、引っ越した先は交通の便が悪く、車を使うことを余儀なくされたのですが、Aさんはそれまでほぼペーパードライバー状態。しかも出産の前後は危険だからと車に乗れず、産後いざ車に乗ろうとしても怖くてなかなか乗れない、という状況に。買い物に行くことすら緊張からストレスに繋がっていました。もっと早くから車に慣れておくべきだった、というのも反省点に。
解説
生活のビジョンが見えて、なおかつそこに無理が生じていないか確認することが引っ越し前にできていること、これが出産と引っ越しが重なったときに一番重要なことと言えるでしょう。