思い出の品を台無しにしないために! 引っ越し作業は事前準備が大切

概要

親元を離れて長らく一人暮らしを営んでいたAさんは、Bさんとの結婚が決まり、今まで住んでいた集合住宅からBさんの実家でもある一戸建て住宅に引っ越すことになりました。Aさんが住んでいた部屋は一人暮らしなので荷物は少量でしたが、両親から贈られた花瓶や飾り皿などを複数所持していたほか、高価なアクセサリーも持っていました。そのため、Aさんは素人作業の引っ越しでは家族の思い出の品を壊してしまうと心配になり、引っ越し専門の業者に作業をお願いすることにしました。引っ越し業者はいくつも営業していたので、どの業者にするかAさんは迷いましたが、その中で丁寧な作業を謳うC業者に依頼することにしました。問い合わせをしてすぐにC業者の営業マンが訪れ、Aさんに引っ越しの日取りや荷物の量、梱包の方法などを事細かに聞いてきました。Aさんは一人で引っ越しの手続きをしたことがなかったので戸惑いましたが、両親が贈ってくれた花瓶や飾り皿は厳重に梱包して運ぶようにお願いしました。C業者の営業マンはAさんの要望に対して肯定的に返答を行い、引っ越し作業に関する同意書にサインを求めてきました。Aさんは自分の要望が聞き入れられたと思い、そのまま同意書にサインを行いましたが、後の引っ越し作業で自身の軽率な行動が失敗だったと痛感しました。

失敗事例

引っ越し当日の正午を過ぎてもAさんが住む集合住宅にはC業者の車両がやって来なかったので、電話で確認をしました。すると電話口では苛立った口調で既に車両が出発したと返答され、さらには作業契約は結ばれているので急かさないように苦言を呈されました。やがてC業者が到着しましたが、その車両は一人暮らしの荷物には不釣り合いな大型のトレーラーでした。しかも集合住宅の駐車場を塞ぐ位置に停めたため、他の部屋の住人が車両の出し入れができない状態になりました。Aさんは車両を移動させるように頼みましたが、C業者の作業員は自分は派遣会社の人間なのでC業者に対する苦情は会社に直接言うようにと返答してそのまま引っ越し作業を行いました。作業も乱雑なうえに養生も施さないので室内は傷と汚れにまみれました。荷物の梱包は緩衝材代わりの丸めた新聞紙を無造作に押し込んでから荷物をダンボール箱に詰め、適当にテープで止めるだけでした。雑な梱包を施した荷物もトレーラーの荷台に放り投げ、大きな荷物にいたっては足で蹴り出していました。新居に到着した後の荷卸しも地面に放り投げていたので花瓶や飾り皿はことごとく割れてしまいました。さらには家具や家電製品も多くが損傷していたほか、高価な製品にいたっては紛失していました。Aさんは作業の乱雑さに不快感を覚え、C業者に抗議しました。しかしC業者は同意書を見せ、Aさんの言い分にはまったく正当性はなく、言いがかりであると反論しました。同意書には作業及び作業に付随する行為のすべてをC業者に一任する旨が記載されていたため、Aさんは思い出の品を含めた荷物の損壊について責任を追及することができなくなってしまいました。

正しい対応

AさんがC業者から出された同意書をよく確認せずにサインしてしまったのが最大の失敗でした。同意書には引っ越し作業のすべてをC業者に一任する旨が記載されていたので、その書類にサインすることでAさんがすべて同意したと見做されてしまいます。そのため、C業者がどれだけ乱雑でいい加減な作業を行ったことに対してAさんが抗議しても、サイン入りの同意書がある以上、AさんはC業者の行為に対する責任を追及できなくなります。引っ越し作業に関するトラブルを防ぐためには必ず書類を隅々まで確認するほか、わからないことは何度でも説明を求めることが大切です。利用客からの質問に対して真摯に対応できる業者であることを確認する意味も含まれているので、業者の良し悪しを見極める際の参考になります。また、自分一人で安易に判断せず、引っ越しの経験者などに相談するのも効果的です。特に一人暮らしであったり、過去に引っ越しの経験がない人は悪質な業者の言いなりになりやすい傾向があることから、必ず経験者に助力を求めるように心がけます。

解説

貴重品の損壊や紛失などのトラブルを避けるためには引っ越し前に別に分けておくのが最良の方法です。花瓶などの壊れやすい物や貴金属類は自分で持ち歩くことでトラブルを回避することができます。引っ越し業者の中には依頼者が荷物を別に分けて自分で持ち運ぶことを嫌がるところもありますが、貴重品の引き渡しを要求する業者は悪質なところが多いので避けます。現場作業を下請けや派遣会社に行わせている業者は不測の事態が生じた際に責任の所在があいまいになりやすいという問題があるので、引っ越し作業を依頼する際は事前に作業に携わる作業員の所属先について確認しておくことも依頼者に必要な心得です。
引っ越し作業をスムーズに進めるためには貴重品類や壊れやすい物は別に分けて自分で持ち運ぶほか、作業内容の詳細や管理責任なども事前に確認しておくことが重要になります。

転ばぬ先の杖!

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